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Feeling leaf

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猫の行方。

 山口少年、十四歳。
 普段はどこにでもいる中学生だが、彼にはもう一つの顔があった。

 学校から帰り、部屋に鞄を放り投げるとすぐさま家を飛び出し、大沼先生の家へ向かう。
 大沼先生は隣に住んでいる探偵だ。
 でも先生に依頼が来ているところを、僕は見た事がない。いつも机に向かって何かを書いている。本当は『自称』探偵なのかもしれない。
 だけど、僕にとっては大好きな『先生』なんだ。
「先生ーっ!」
 大声で呼びながら玄関で靴を脱ぎ捨て、部屋に上がり込む。毎日のように来ているので、勝手知ったる所なのだ。
「お前なぁ、もっと静かに入ってこいっていつも言ってるだろ!」
 先生の怒鳴り声が飛んでくる。これもいつもの事。他の事に怒られるのは嫌だけど、でも先生に怒られるのは嫌いじゃない。
 特に今の僕は上機嫌。怒っている先生にはお構いなしに話し始める。
「先生先生、あのね、依頼が来たんだ!」
「依頼?」
 そう、実は僕も『山口少年探偵団』を結成している探偵なんだ。とはいってもまだ中学生だから、同級生や近所の人に探し物を頼まれるくらいなんだけど。
 でも将来探偵を目指している僕には、どんな小さな事でも大切な仕事だ。
「そう、猫を探してほしいんだって」
 それは同級生の女子からの依頼だった。飼っている猫が突然姿を消し、三日経っても帰って来ないらしい。
 同級生はかなりその猫を可愛がっていたらしく、僕に依頼してきた時は半泣きのような状態だった。「お願い、山口君!」と涙目で言われては流石に断れない。
 しかも今までは自転車の鍵が見当たらないとか、渡しそびれたラブレターを人に見られる前に回収してほしい、といった依頼ばかりで、生き物を捕まえてほしいというのは初めてだ。
 僕にとっていちばん難解で、大きな依頼と言えるだろう。いやがおうにも気合いが入る。
「猫探しか、そりゃまた面倒臭そうだな」
「難しいかなぁ、やっぱり‥‥」
「そりゃ自転車の鍵探すのとは訳が違うだろ。動物なんだからあちこち動き回るだろうしな」
 そう言って、先生は手に持っていたペンで耳の後ろを掻いた。
 それは僕だって分かってる。物と違ってこっちが見つけるまで、同じ場所でじっと待っててくれる訳じゃない。
「迷い猫の貼り紙でも貼るしかねーんじゃないのか?」
「それはもうやったみたい。近所の電柱やお店に写真付きのポスター貼らせてもらったって」
 それでも効果が無かったから僕に頼んできたんだし。
「そうか‥‥じゃ、後は地道にその辺探すしかないだろ」
 やっぱりそれしかないのか。他にもっといい方法がないかと思って先生に聞きに来たのに、出端を挫かれた感じだ。
 そんな事を考えていると、先生が
「ただ闇雲に探すんだったら、その前に図書館にでも行って猫の習性とか調べてみたらどうだ?」
と助言してくれた。そっか、猫の事が分かれば行動パターンが見えてくるかもしれない。
「うん、そうしてみる。ありがと先生!」
 お礼を言って、僕は先生の家を飛び出した。
 後ろから先生の「こら、バタバタ走るな!」って声が聞こえた気がしたけど。


ネタがない時には小話を(笑)。
今回はまぐ探ヴァージョンです。
勝手に作った設定が所々にありますが、広い目で見てやって下さいませ。
by feeling_leaf | 2006-01-16 19:09 | おはなし | Trackback | Comments(0)

日々思った事を徒然に。


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