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Feeling leaf

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初めての家出 2。

 公園を出てどのくらい歩いただろう。いつもはママやパパと車で行く所も、まやちゃんと二人で歩いてるとずいぶん遠くに来たような気がする。
「ねーねーまやちゃん、どこまでいくの?」
「どこまでって、そんなの決めてないわよ。家出なんだから」
「『いえで』ってどこいくか、きめないの?」
「そうよ、家出っていうのはあてもなく家を出てきちゃう事なんだから。そんな事も知らないの?」
「うん。だってママにだまってでかけちゃいけないんだよ。あとでママにおこられちゃうもん」
「かっぺー君、ママに怒られるのがそんなに恐いの?男の子のくせにホントだらしないんだから」
 まやちゃんは呆れながら、どんどん先に歩いてく。その後をぼくは急いで追いかける。どこに行くのか分からないし、ママもパパもいないからすごく不安だけど、でもまやちゃんに置いていかれるのも心細い。だから一生懸命追いかける。
 まやちゃんは不安じゃないのかなぁ。後ろ姿からは分からないけど。
「あ〜あ、何だかお腹すいてきちゃった」
  振り返りもせず、まやちゃんが突然言い出した。まやちゃんが「お腹すいた」って言うのはいつもの事だから、ぼくは特別驚いたりしない。でも今はぼくも歩きっぱなしでお腹がすいていた。
「うん、ぼくもちょっとおなかすいた。まやちゃんおかしとかもってる?」
「持ってないわよ。かっぺー君が遅れてきたから、待ってる間に食べちゃったもん。かっぺー君何か持ってないの?」
「ぼくヨーヨーと、ムシキングのカードしかもってないよ」
「かっぺー君そんな物しか持って来なかったの?そんなの家出するのに何の役にも立たないじゃない。全く使えないわねぇ、かっぺー君って」
「だってなにもってこればいいのかわかんなかったんだもん‥」
「もぉ〜、しょうがないわねぇ。じゃお金は持ってる?」
「ううん、もってない」
「はぁ‥ホントに役に立たないんだから」
「じゃあまやちゃんはもってるの?」
「少しなら持ってるわよ」
「すっげー!まやちゃんおこづかいもってるんだぁ」
「そりゃそうよ。今どきは幼稚園児でもおこづかいくらい持ってなきゃ」
「じゃ、そのおかねでなにかたべれるね」
「え〜、どうしてまやがかっぺー君におごらなきゃいけないの?普通は男の方がおごるのよ」
「だってぼく、おかねもってないんだもん‥」
「しょうがないわねぇ。今回はまやがおごってあげる。その代わり今度はかっぺー君がおごるんだからね」
「うん、わかった」
 話はまとまり、ぼくとまやちゃんは近くのうどん屋さんに入った。ここはぼくが前にパパと一緒に来た事があるお店だ。「ママには内緒だぞ」ってパパが言ってたから、ママとは来た事ないけど。
 引き戸を開けると中から「いらっしゃいませ〜」とおばさんの声がした。そのおばさんはぼくの事を覚えていたらしく、ぼくの顔を見ると
「あら、勝平君こんにちは。今日はパパと一緒じゃないの?」
と声を掛けてくれた。
「ううん。きょうはパパじゃなくて、まやちゃんといっしょなの」
と答えると、まやちゃんはおばさんに「こんにちは」と挨拶した。
「はい、こんにちは。偉いわねぇ、ちゃんとご挨拶出来て」
と言いながら、おばさんはぼくとまやちゃんを席に案内してくれた。
「今日は何食べるの?お金はちゃんと貰ってきたのかな?」
 おばさんにそう聞かれたので、
「うん、おかねはまやちゃんがもってるよ」
と答えた。まやちゃんは机の上にピンクのお財布を出し、
「これだけありますけど、おうどん食べられますか?」
と、おばさんに聞いた。机には百円玉が三枚と、十円玉が四枚ある。
 おばさんはお金を見て、少し考えると
「う〜ん、本当はダメなんだけど‥ちょっと待っててね」
と、お店の奥に入っていった。
「ねーねーまやちゃん、うどんたべられるかなぁ?」
「分かんないけど‥大丈夫じゃない?」
「どうして?」
「どうしてって‥まやが『大丈夫』って言ってんだから大丈夫なのっ!」
「わ、わかった‥」
 やっぱり今日のまやちゃんはいつもより機嫌が悪い。こういう時は、何を言っても怒られちゃうから大変なんだよね。
 しばらくすると、おばさんがプラスチックのどんぶりを二つ、お盆の上に乗せて戻ってきた。
「本当はお金足りないんだけど、今日は特別におばちゃんが奢ってあげるから。これだけしかないけど、我慢してね」
と、ぼくとまやちゃんの前にどんぶりを置いてくれた。うどんの上に三角に切った油揚げが一枚。
「おばさん、ありがとう」
 まやちゃんと二人でお礼を言った。おばさんはニッコリ笑って、仕事に戻っていった。
 ぼくは両手を合わせて「いただきます」と言い、うどんを食べ始めた。
 でもまやちゃんはうどんに手を付けようとしない。いつもならぼくより早く食べ始めるはずなのに。
「まやちゃん、どうしたの?」
「‥ううん、何でもない。いただきます」
 まやちゃんも、ぼくと同じように手を合わせた後、うどんを食べ始めた。


昨日の続きです。
明日には終わるかな。
こむぱらの感想がずれると思いますが、ご了承下さい。
by feeling_leaf | 2007-01-04 18:54 | おはなし | Trackback | Comments(0)

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